いま、ある政党が少子化対策の一環として、
「女子高生に子育てという選択肢を提示する」という政策を打ち出し、物議を醸しています。
「進学より、子育てをしよう。」
そんな言葉が、10代の少女たちに向けられる社会が本当に望ましいのでしょうか?
それで人は増えるかもしれません。
でも、その国は本当に豊かになるのでしょうか?
実際にある。10代の出産が多い国、ブラジル

南米のブラジルでは、性教育が十分に行き届かない地域があり、10代の妊娠・出産が多く見られます。
貧しい家庭の子が、
- コンドームの使い方を知らない
- 自分の体を守る知識がない
- その結果、10代での妊娠・出産が当たり前のように起っています。
「じゃあ、人口が増えて国も強くなるんじゃないの?」
という意見もあるかもしれませんが、実は、まったく逆です。
人は増えても、国は豊かにならない理由
✔ 教育を受けられなくなる
10代で子どもを産むと、ほとんどの人が学校をやめます。
高校も大学も行けず、仕事の選択肢が限られます。
✔ 働けない=お金がない
学歴がないまま子育てに追われ、パートや日雇いなどの低収入で生きていくしかありません。
✔ 娼婦や搾取のリスクも
生活のために、性産業に入る若い女性も多くいます。
望んだわけではない妊娠や、暴力、虐待の連鎖も起こります。
そして起こる「貧困のループ」
これが、貧困の再生産と呼ばれるスパイラルです。
性教育や支援が足りない
↓
10代で妊娠・出産する
↓
学校を中退し、学歴がないまま社会に出る
↓
安定した仕事に就けず、育児との両立も難しい
↓
経済的に困窮し、貧困状態になる
↓
子どもにも教育機会や環境を与えられない
↓
その子どももまた、10代で妊娠・出産する可能性が高くなる
↓
そしてまた「最初に戻る」——このループが、ずっと続いていくことになります。
実際にブラジルは貧困国から抜け出せない
ブラジルでは、10代の出産が年間30万人以上(15~19歳)います。
その結果、低学歴のままシングルマザーになる人が多く、子どももまた同じ道へと進んでいきます。
性的虐待やDV、売春に巻き込まれる未成年も多数います。
貧困人口が多いため、国家全体で「低学力世代」が積み重なっていきます。
ブラジルの現状を見ると、
人は増えても、国の未来は沈んでいく。
ということがわかります。
女子高生に「産むか、進学か」を選ばせることの残酷さ
話を日本に戻しましょう。
日本のある政治団体は少子化対策として「女子高校生に対し進学と子育てという二つのライフプランを提示する」という政策で話題となっています。
「18歳なら判断できる年齢でしょ」
そんな声もあるかもしれません。確かに法的には“成人”とされる年齢です。
でも、実際の18歳ってどれだけ社会を知っているでしょうか?
- 消費者金融がどれだけ借金になるか、知らない
- 保育園の空きがどれだけ少ないか、知らない
- 学歴で年収がどれだけ変わるか、知らない
- 子どもを抱えて働くのがどれほど厳しいか、知らない
- そして、一部の男が責任を取らないことも、まだ知らない
結局、1人で育てることになる
「子どもができたら、彼が何とかしてくれる」
そんなふうに信じていた少女が、現実を知るのは出産後かもしれません。
- 男性側は「親になる覚悟がなかった」と逃げることも多い
- 認知や養育費が保証されるわけではない
- 最終的に、育てるのは“母親1人”
子どもは2人で作れる。でも育てるのは、たいてい1人――これが現実です。
就労の約束?その前に“生活”ができない
「産んだあと、社会が支援する。就職もサポートする」
そんな言葉が並んでいたとしても、現実の問題は“今月の生活費”です。
- 乳児を抱えて働ける?
- 保育園はすぐ入れる?
- 親がいない場合、誰が預かる?
- 食費、紙おむつ、医療費、家賃…
どこからも支援が届かなければ、少女と赤ちゃんはすぐに“貧困家庭”へまっしぐらです。
その結果、社会について何も知らない少女が「簡単に大金が稼げる」という怪しい誘いがきて、子供のため、と性産業などに搾取されていく。そんな国でいいのでしょうか。
出産は「選択肢」でも“覚悟”でもない
18歳の少女に、
「大学へ進学して働くか、今産んで子育てするか」
という重すぎる人生の二択を迫る社会は、優しくなんてありません。
これは“選択肢”ではなく、押しつけられた運命です。
男性に依存して理不尽な要求にも耐えて生きていくか、
子供を産まなかったダメな女として生きていくか、を迫られているようです。
10代の「出産推奨」は結局、貧困を増やすだけ
- 収入のない若者が出産すれば、当然生活は厳しくなる
- 教育も職業訓練も中断される
- 子どもにも満足な教育や環境が与えられない
- その子が大人になってもまた…という負のスパイラル
人口を増やすどころか、未来の選択肢を減らし、格差を広げる政策にもなってしまいます。
国を豊かにするのは、若い女の子に子どもを産ませることじゃない。
教育と選択肢を与えること。
それが、貧困から抜け出し、優秀な人材を育て、国を本当に豊かにする方法です。
最後に
「女子高生に、産むか進学かの選択をさせる社会は、本当に豊かになれるのか?」
それは本当に“国のため”になるのか?
それとも、“自己責任”の名のもとに、未来を削っていくだけなのか?
もし誰かが「女子高生に出産という選択肢を」と言ったら、それは優しさではなく、未来を閉ざす言葉かもしれません。