クジラが海岸に打ち上げられると、地震の前兆?過去の地震でも同様の事象はあった

スピリチュアル

2025年7月、千葉県館山市の海岸に4頭のクジラが打ち上げられるという異例の出来事が発生しました。
その直後、ロシア・カムチャッカ半島付近でM8.7という巨大地震が発生したことから、

「クジラの座礁は地震の前兆ではないか?」

とSNS上で憶測が飛び交いました。
実は、過去にも地震の前にクジラやイルカが打ち上げられた事例があり、「地震の兆候としてのクジラ打ち上げ説」は根強く語られてきました。

果たして今回のクジラ漂着と地震には、本当に関係があるのでしょうか?
専門家の見解や過去の事例をもとに、「地震の兆候としてのクジラ打ち上げ」の真偽を検証します。

千葉県館山市で4頭のクジラが打ち上げられる

Youtubeより

2025年7月29日、千葉県館山市の平砂浦海岸で、体長7~8メートルに及ぶ4頭のクジラが座礁しているのが発見されました。

館山署によると、午後6時半ごろに「浅瀬にクジラが打ち上げられている」との通報があり、警察官が現場に駆けつけたところ、クジラたちはまだ生きている様子だったといいます。

打ち上げられたクジラの種類は、専門家の映像分析によりマッコウクジラと推定されています。マッコウクジラは館山沖の深海域にも生息している種類であり、目撃自体は珍しくないものの、4頭同時に漂着するのは極めて異例です。

そして、翌7月30日午前には、ロシアのカムチャッカ半島付近でマグニチュード8.7の巨大地震が発生。この偶然の一致から、SNSでは「クジラの座礁は地震の兆候だったのでは?」という声が急増しました。

専門家の見解「地震の影響の可能性は完全には否定できない」

このクジラの打ち上げについて、国立科学博物館の田島木綿子(たじま ゆうこ)研究主幹は、次のように見解を述べています。

「今回座礁したのはマッコウクジラとみられます。館山沖では珍しい種類ではありませんが、4頭同時の座礁は初めてのケースかもしれません」

さらに田島氏は、過去の例として2011年のニュージーランド地震東日本大震災の直前にも、クジラやイルカが海岸に打ち上げられた事実があることを紹介。そのうえで、

深海で何らかの異変が起き、千葉県沖にいたクジラに影響が及んだ可能性は完全には否定できない

とコメントしています。

ただし、その「異変」と地震の因果関係、またクジラの座礁との直接的なつながりを科学的に証明するのは極めて困難です。

海洋哺乳類は音に敏感であり、地殻変動に伴う微細な海底音や超低周波の影響を受けて方向感覚を失う可能性も仮説として語られていますが、現時点ではあくまで憶測の域を出ていません。

 科学的には因果関係を裏付ける証拠はなし

一方で、地震とクジラの打ち上げの因果関係を否定する専門家の声も根強く存在します。

北海道大学の黒田実加氏(NPO法人ストランディングネットワーク北海道・理事/特任助教)は、次のように明言しています。

「クジラやイルカが海岸に打ち上げられる現象は、日本全国で1日に1件程度の頻度で発生している。特別なことではなく、地震の前兆としての根拠はない

また、過去の事例としてしばしば引用されるのが、2011年3月11日の東日本大震災の約1週間前に起きたイルカ50頭以上の座礁(茨城県)です。この件についても、2015年に東海大学などの研究チームが調査を行い、「地震との関係はなかった」と結論づけています

こうした科学的調査に基づき、現在のところ「クジラの打ち上げ=地震の兆候」とする明確な証拠は存在しないというのが研究者の共通見解です。

クジラの座礁が起きる原因とは?

では、なぜクジラは突然、海岸に打ち上げられてしまうのでしょうか?

これまでの研究では、クジラの座礁(ストランディング)にはいくつかの仮説が存在しますが、明確に特定された原因はないのが実情です。

地磁気異常

クジラは航行に地磁気を利用していると考えられており、地震前後に地下の岩盤がずれて地磁気が乱れることで、方向感覚を失うという説があります。

音響的な異常(海底音・超低周波)

地震の前兆現象として知られる超低周波(ULF)や異常音を、音に敏感なクジラが察知して混乱するという仮説もあります。

ただし、これも「理論上の可能性」にとどまり、直接的な証拠や再現実験は困難です。

潮流や水温、病気などの生理的要因

  • 潮の流れや海流の異常
  • 体調不良や病気
  • 捕食を追って浅瀬に入り込み、そのまま座礁といった、より自然的・生理的な要因も考えられます。

つまり、地震の有無に関わらずクジラが打ち上がる要因は多岐にわたり、地震との因果関係はあくまで一部の仮説のひとつに過ぎないということです。

デマや憶測への警鐘

SNSや動画投稿サイトでは、「クジラが打ち上がると地震が来る」といった不安を煽る投稿が拡散されがちです。

しかし、こうした情報には注意が必要です。

2024年7月にも、千葉県旭市でマッコウクジラが打ち上げられた際に、

「これは地震の前兆だ」「カムチャッカの大地震と関係ある」といった憶測がネット上で広まりました。

その一方で、国立科学博物館の田島木綿子研究主幹は、あくまで“可能性”として指摘しつつも科学的裏付けには慎重な立場を取っています。

「深海で異変が起き、クジラが何らかの影響を受けた可能性は否定できないが、地震と結びつけるには根拠が不十分

また、北海道大学などの専門家は「偶然の一致に過ぎない可能性が高い」「データの蓄積と慎重な分析が必要」と述べており、過度な関連付けは科学的リスクを伴うと警鐘を鳴らしています。

まとめ:自然現象への冷静なまなざし

クジラの打ち上げと地震には、過去に「奇妙な一致」が何度も報告されてきました。

しかしながら、「関連がある」と言い切れる科学的根拠は現時点では存在しません

  • 地震の直前にクジラが座礁したことは事実としてある
  • ただし、座礁の原因は地磁気や病気、潮流など多岐にわたる
  • そして、地震の“前兆”であると断言するには証拠が不十分

私たちは、こうした自然現象に対して過度に不安を抱いたり、デマに流されたりすることなく、冷静に科学的視点で見つめる姿勢が求められています。

もし地震への備えが不安なら、まずは防災リュックの確認や避難ルートの共有など、日常の備えを見直すことが最も効果的な対策です。

地震の兆候として、雲の形などで地震の兆候がわかる、と言われている雲があります。

詳しくはこちらの記事をどうぞ

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